2025/10/11
|
|
「債権は司法書士試験より行政書士試験が難しい」は被害妄想 |
|
私は、最近はネットの掲示板は殆ど見ませんし、特に資格関係は見ないようにしていますが、行政書士の掲示板で、「債権は司法書士試験より行政書士試験が難しい」という書き込みを時折見かけました。私は、行政書士の本試験の民法の解説も多少書いていますし、記述式の題材としても択一式の民法には目を通しているので、行政書士試験の債権の出題内容も知っています。その点から考察してみたいと思います。 結論から言いますと、「司法試験と司法書士試験は法務省管轄の試験、行政書士試験は総務省管轄の試験なので、傾向が異なる。特に債権に関して行政書士試験は、司法試験や司法書士試験で問われていないような条文や判例が問われている。問われている根拠について、違うものを題材にしているだけで、法学の試験として、行政書士試験が司法書士試験よりも難しいわけではない」というのが、私の考えです。 同じ法務省管轄の司法試験と司法書士試験の同一科目でも、傾向は異なります。しかし、令和元年に、司法書士試験の刑法において、初めて名誉棄損が単独で1問出題されましたが、平成29年の司法試験予備試験において出題された名誉棄損の問題と、正解肢も含め、3肢が同一論点でした。明らかに予備試験の問題を参考にしており、私見ですが、同一省庁なので、データのやり取りもあった可能性は十分あるかと思います。このように、同一省庁の管轄だからこそ、ある程度出題は似通る訳です。管轄省庁が異なる試験の問題のデータのやり取りをしていることは考えられないですし、これも私見ですが、試験委員は、予備校が考えているほどは、他の省庁の管轄の試験を参考にしていないのでは、と思っています。債権に関しては、それが顕著で、行政書士試験では、司法試験や司法書士試験では出題されていない条文や判例が出題されるので、難しく見えてしまうだけです。行政書士試験の債権でも、司法試験や司法書士試験では出題されないような簡単な問題も出題されていますし、行政書士試験が、特に法学の試験として難しいわけではありません。おそらく、司法試験や司法書士試験を少しかじった者が、被害者意識でネットに書き込んでいるだけだと思います。 同じことが憲法でも言えます。憲法も、「憲法は司法書士試験より行政書士試験が難しい」という書き込みを見たことがあります。この記事を書くに際して、過去6年分の行政書士試験の憲法の出題を眺めましたが、確かに、問題41で出題される穴埋め形式は、行政書士試験の方が面倒ではあります。しかし、通常の択一式は、癖の強い出題は少しあったものの、特に司法書士試験よりも難しいとは思えませんでした。むしろ、過去に司法書士試験で出題された学説3説の見解問題のような、やり過ぎだった出題に比べると、そこまで難易度の高い問題はないように思います。また、これも他の省庁の管轄ということに起因するとは思いますが、司法書士試験とは傾向が異なるように思います。 受験生のうちは、被害者意識的に試験について、あれこれ語っても仕方ないと思います。ただひたすらに、試験で合格最低点を取ることだけを考えていただけたらと思います。 |
|