2025/9/16

司法書士受験生の事務所経験の是非⑤(業界に希望が持てなくなると受験の意欲も下がる)

 私は、3軒すべての事務所で、嫌な思いをしました。順に、リストラ、モラハラ、パワハラでした。そうなると、この業界に希望が持てなくなり、モチベーションが保てなくなるのです。それが、正直、その後受験が更に長期化した要因の一つでもあります。

 前述したモラハラ事務所に勤務していた彼以外でも、模試でA判定が付くレベルの受験生で、実務に就いて失望し、受験を断念した人を3人知っています。うち一人は「実務に就いて、こんなに厳しい思いをしてまで試験を受ける意味を感じられなくなった、そこまでする魅力的な仕事に思えなくなった」とはっきりと口にして試験から撤退しました。ほかの2人は、ほかにも理由はあるのでしょうが、実務に就いた失望感を口にしていたので、試験を断念した理由の一つにはなっていると思います。

 もちろん、ブラック事務所ばかりではありません。特別研修を受けた時、5人1組のうち2人は、それぞれ別の事務所ですが、おそらく日本でも十指に入るであろう、超が付くホワイト事務所に勤務していました。そのうち1人は、その事務所で働きながら合格しましたが、合格後も、その事務所を辞める気はないと話していました。そのとおりで、ホワイト事務所は、そこで働きながら合格しても、独立せずにそのまま勤務する人が多く、なかなか人が動きません。ですので、ブラック事務所に捕まるのか、ホワイト事務所に就職できるのかは、殆ど運でしょう。

 長々と書いてしまい、申し訳ありません。これでもかなり、要約しました。恨み節は好きでないので、かなり割愛しましたし、とてもここには書けない危険な話も割愛しましたが、本当は、もっと嫌な思いをしています。一言でいうのなら、受験生は良い事務所に恵まれないと、かなり悲惨、業界に希望が持てなくなるので、受験のモチベーションも下がってしまう、と言うことです。

 平成20年前後だったと思いますが、埼玉の事務所でパワハラを受けた挙句、解雇された補助者がその事務所の所長を提訴しました。所長は慌てて弁護士を通じて和解を試みたのですが、元補助者は頑なに拒否し、その顛末をネットに上げていました。それから数年後、そのネットの書き込みは閲覧できなくなくなりました。おそらく、納得できる和解が成立したので、削除したのでしょう。その方のネット情報を記憶する限り、私もほぼ同等のことを、3軒目のパワハラ事務所でやられました。私も提訴すれば、有利な和解に持ち込めた可能性が高かったでしょう。

 私は何よりも、試験合格を優先しました。余計なことに時間と労力を費やしたくありませんでした。だから、結果的には泣き寝入りしてしまいました。今は、パワハラを受けた補助者は、本会に苦情を申し立てる者がいるそうで、そういった話を複数聴きましたが、とても良いことだと思います。以前は、狭い世界だからと泣き寝入りする者が多かったですが、泣き寝入りをすれば、不幸の連鎖が続くだけだと思います。

 あくまでも私見ですが、難関資格の受験生は、とても弱い存在です。弱い存在だからこそ、進んで弱者に厳しすぎる世界へ行く必要はありません。受験生のうちは、私個人の意見としては、事務所への就職は、あまりお勧めできません。ブラック事務所に捕まった場合、受験にまで影響を及ぼすからです。もし、補助者志望者で、ホワイト事務所に勤務している知り合いがいれば、空きが出たら声掛けしてほしいと、「予約」しておくことをお勧めします。

 大切なことは、フルタイムで働きながら、社会人経験を積むことです。そうであるならば、社会人経験を積む先が、司法書士事務所である必要はありません。むしろ、異業種の方が、別の経験を積むことができて、視野が広がります。以前書いた説教と自慢話が大好きな成功者の御仁は、そもそも社会人経験がない上に、司法書士業界しか知らないので、視野が極端に狭く、司法書士業務以外は、紙みたいにペラペラに薄っぺらな話しかできませんでした。金持ち自慢するくせに、その年齢でそんな話しかできないの?と思いました。

 弱者には、弱者に合った戦い方があります。私個人としては、実務経験は合格後で十分、むしろ合格するまでは異業種で働きながら、虎視眈々と合格して次のステージへ行くチャンスを狙った方がよいのではないか、と思っています。私は、合格者でもパワハラを受けて短期で退職した例を、身近で2例知っていますので、合格者だからといって、パワハラを受けないわけではありません。しかし、合格者であれば、すぐにほかの事務所へ移れますし、開業も可能です。受験生でも、運よくホワイト事務所に就職できる可能性はあり、一概には言えませんが、私個人は、合格者という強い身分になってから事務所へ就職した方が無難である、と思います。