自身が不貞行為による慰謝料の請求を受けた場合について、ここでは、既婚者と不倫をしたということで、相手方の配偶者から内容証明郵便によって、慰謝料の請求を受けた場合で考えてみます。

 これが、本当に身に覚えのない濡れ衣でしたら、すぐに反論した方が良いでしょう。無視していると、相手方の心象も悪く、現実に提訴される可能性もあります。

 逆に、身に覚えのある場合が問題になります。この場合、すぐには身に覚えのあるような発言はしない方が良いでしょう。法の世界は証拠がすべてです。不倫の場合、怒りの感情が先に来て、確固たる証拠もないのに、いわゆる「はったり」で、慰謝料の請求をしてくる場合もあります。不倫を認めるのは、興信所の証拠写真等、逃げようのない証拠を提示されたあとで十分です。

 そのような逃げようのない証拠を提示された場合、相場の金額を支払えば十分です。もし謝罪の気持ちが強く、相場よりも多く支払う意思があるのでしたら、それも選択肢ではあると思いますが、その場合でも、相場に若干のプラスをすれば良いのではないでしょうか。

 男女間トラブルに限らず、訴訟やその前提としての内容証明による慰謝料の請求において、最初は相場よりも大きな金額で請求してくるのが常套手段です。男女間トラブルの場合、140万円を超える金額を請求してくる可能性が高いと思われますので、その場合、ご自身で減額の交渉ができなければ、弁護士に依頼することになります(140万円以下の請求でしたら、認定司法書士も可能です。)。

 ご自身で減額の交渉をする場合、相手方がなかなか聞き入れなければ、相場の金額を供託するという手段もあります。供託とは、供託者が供託物(金銭,有価証券,振替国債等)を国家機関である供託所に提出してその管理を委ね,供託所を通じて,債権者等の特定の相手に取得させることにより,一定の法律上の目的を達成しようとする制度をいいます(法務省HPより)。つまり、身に覚えのある不倫の場合、相場の金額の慰謝料を供託してしまえば、相手方は金額に不満があって裁判をしても、その金額を上回る金額を得ることはできないのですから、供託金の還付を受けることで、矛先を収めるしかなくなります。この方法で、すべてのケースにおいて解決できるとは断言できませんが、相場の金額による供託は、不貞行為で慰謝料を請求された場合において、有効な手段といえると思います。

 供託手続は、司法書士の業務でもあります。それなりに交渉能力のある方でしたら、弁護士に着手金と減額報酬を支払うよりは、供託制度を使って安価に済ませる方法もありますので、ご検討いただけたらと思います。