2025/9/16

司法書士受験生の事務所経験の是非①(リストラ癖のある事務所)

 司法書士受験生が、試験合格まで司法書士事務所に勤務することの是非は、人それぞれで、各人思う所があるかと思います。合格して登録した者が、なかなか言いづらいテーマではありますが、私の受験が超長期化した要因でもありますので、あくまでも私見として書いてみたいと思います。

 私は、受験生時代、3軒の事務所を経験しました。最初の1軒は都心の不動産鑑定士との兼業事務所で正社員として約2年、次の1件は、Lでの教材制作時代に、スポットで年に1,2回の手伝い、最後は都内の事務所で正社員予定でしたが、試用期間の1か月で、こちらから辞めました。いずれもブラック、特に最後の事務所が酷いパワハラ事務所で、この3軒の事務所でこの業界に失望し、希望が持てなくなったことが、受験が長引いた要因の一つとなりました。

 最初の事務所は、所長が司法書士と不動産鑑定士の資格者でしたが、ジャンルの全く異なる仕事なので、その事務所で働きながら司法書士に合格した番頭に高額な年俸を与えて司法書士業務を丸投げし、所長自身は不動産鑑定士業務に専念していました。

 その事務所はバブル崩壊の翌年に正社員補助者を2名リストラし、2年後、経営が持ち直して雇われたのが私でした。1年目は忙しく、面接時の説明の倍以上の残業をやらされていましたが、2年目に仕事が激減しました。そして、平成7年の試験10日前に、所長から、事務所の経営が行き詰まり、2名リストラするので希望者を募る、希望者がいなければこちらから指名するとの説明がありました。夏の賞与の支払いのため、税理士の兄に経理を見てもらったところ、経営が破綻状態なのが発覚しました。仕事減に加え、元々ギャンブルが好きで、山っ気のある所長が投資に失敗し、多額の負債を抱えていたことが要因でした。実は、私は仕事減が気になり、前年度比での受託の減少割合を記録していたのですが、番頭は一切、受託減を所長に報告していませんでした(後に番頭から、何で教えてくれなかったんだ、と言われましたが、それは貴方の仕事でしょう、高額な年俸を貰っていたのに何もしていなかったのですから、事実上、背任でしょう、と思いました)。当時事務所最年少だった私が、試験の数日後、リストラを宣告されました。

 所長は毎朝11頃重役出勤、しかし、9時には事務所近くの喫茶店へ行き、小説や漫画を読んでから出社しているそうで、仕事中も、よく仕事に無関係な小説を読んでいました。所長がもっと早く経営難に気付き、営業に精を出し、これだけ営業をやっても駄目だったから辞めてくれ、というのならわかりますが、いい加減なことをやってきて、いざ破綻状態がわかったら、あんた辞めてくれ、と言われても、ふざけるな!となります。生活があるので、退職を1か月少々伸ばしてもらいましたが、退職までの間、本当に嫌な思いをしました。また、その事務所では、先輩補助者からのモラハラもありました。

 不動産登記をメインにする司法書士事務所は景気に左右されやすく、リストラの話は、ほかにも聞きます。原則として、司法書士事務所には労組がないため、一人で加入できるユニオンに入らない限り、リストラは泣き寝入りせざるを得ません。したがって、一度でもリストラをやった事務所は、受託が減れば、またリストラをやればいいと、リストラが癖になります。一度でもリストラをやった過去のある事務所は、要注意です。