2025/8/29

本人訴訟は事前に専門家に相談した方が良い

 詳細は書けませんが、本人訴訟を提起した方から、その後の処置を相談されたことが2度あります。1件は、被告の代理人弁護士の答弁書にボロクソに書かれ、その対応、もう1件は、最初の訴状に裁判所から補正を命じられた対応でした。いずれも、訴えを提起するのには無理がある事案で、前者は取り下げることを促して辞退、後者も取下げを促した上で、訴状の体裁を作ることは可能だが、スラップ訴訟(嫌がらせ訴訟)と認定されて反訴を提起される可能性が高いので、その覚悟はしてほしいと伝えました。取下げの方向で考えたいとのことでその後の連絡がありませんでしたが、取り下げるしかなかったと思います。

 弁護士を立てない本人訴訟は、ある程度知的水準の高い方が行う場合が多いかと思いますが、裁判とは難しいもので、そのために弁護士や司法書士が存在するわけです。個人的には、単純なお金の貸し借りで、借用書もあるような、わかりやすい場合でない限り、よほどマニアックに訴訟を勉強しないと、本人訴訟は難しいかと思います。

 このように、単純なお金の貸し借りのような事案でない場合、「果たして裁判をやってまで認められる権利なのか」が問題となります。その場合、「裁判をやってまで認められる権利」でないと判断されれば、スラップ訴訟(嫌がらせ訴訟)とみなされて、相手方から反訴を提起される可能性があります。

 冷静に考えてみていただきたいのですが、訴えを提起された側が、「これ、裁判やるほどのことじゃないよね、ここまでくると言いがかりだよね」と受け取ったとします。それでも、相手が弁護士を立てれば、裁判をやるほどでもないことのために、お金も時間を費やすことになるのです。そこを軽く考えてはいけません。相手方からすれば、「裁判やってまで認められる権利なんてないくせに裁判をやってこちらに弁護士費用を使わせるんだから、わずかながらでも慰謝料と、弁護士費用ぐらいは取り返してやる」と実力行使(反訴の提起)をされても仕方がないかと思います(相手が弁護士を立てなくて本人訴訟で応じても、仕事を休んで時間と労力を費やすので、同じことです)。

 本人訴訟をやるような方は、正義感の強い方です。そうであるが故に、裁判をやるほどの損害がなくても、「パワハラ」というパワーワードを基に、相手に裁判を起こすことがあります。昨今はパワハラに厳しく、昔に比べると良い時代になったとも思いますが、パワハラという言葉が独り歩きし、「それ、パワハラというほどではないよね」という事案にまで、過剰に使われているようにも思います。

 本人訴訟は訴状を書くだけなので、弁護士は受けないと言われています。現実に士業で関与するとすれば、司法書士ですが、私は、本人訴訟を考えている方は、司法書士会や自治体の無料法律相談で、事前に司法書士に相談することをお勧めします。上記で私が受けた相談の後者は、被告が複数いて、そのうちの一つの団体がお金がないので、弁護士費用を取り返したいと反訴を提起する可能性が高いこと、相場で100万円前後請求され、反訴が提起されれば敗訴し、100万円前後支払わなければならない可能性が高いと伝えました。事前に相談していれば、最初の訴訟提起の印紙代を払わずに済んだはずです。本人訴訟をお考えの方は、是非、無料法律相談で構わないので、事前に専門家に相談していただきたいと思います。