2025/6/24

自筆証書遺言の法務局への保管の勧め

 先日、ご依頼のあった遺言書作成支援の業務が終わりました。最初に公正証書遺言、自筆証書遺言のメリット、デメリットを説明の上、どちらかというと、公正証書遺言をお勧めしたのですが、資産総額が一般家庭程度であったこと、公正証書遺言の場合、公証役場の費用や士業報酬を含め、総額で10万円を超えてしまうことに抵抗があったこと、家族の状況を考え、後に裁判をやるほどは揉めることはないだろうということで、法務局への保管制度を利用する自筆証書遺言の作成をすることにしました。

 まず1回目のヒアリングでご家族、資産、ご希望についてうかがい、遺言者がご高齢ということで、かかりつけ医に、遺言能力がある旨の診断書を書いていただくよう、お願いし、2回目のヒアリングで資産の資料をご提示いただき、どのような遺言にするか詰めて、後に私が下書きを作成(財産目録も私がPCで作成)、3回目で私の面前で下書きに沿って、遺言者ご本人に書いていただき、その場で法務局へ連絡し、保管手続の予約を取りました。そして、私が保管の申請書を作成、当日は遺言者ご本人に私が付き添い、法務局で手続を済ませ、無事に終了となりました。

 士業の遺言書作成支援においては、公正証書遺言、自筆証書遺言のメリット、デメリットを説明の上、どちらかというと、公正証書遺言をお勧めするのがセオリーかもしれません。しかし、億超えの資産があるならともかく、都心以外の一般家庭の資産で、後に裁判をやる可能性があるほど不仲な家族でなければ、法務局保管の自筆証書遺言でも構わないように思います。公正証書遺言の方が、信頼性があるという問題も、遺言者がご高齢の場合、事前に遺言能力がある旨の医師の診断書を取れば、リスクを減らすことができます。何より、億超えの資産でなければ、遺言に10万円以上をかけるのに抵抗があるのは、無理もないかと思います。特に、年金生活者にとって、10万円以上の出費は、痛いかと思います。この辺が、遺言が必要と思いつつも、腰が重くなる要因の一つかと思います。

 法務局へ保管すれば、遺言書の紛失の危険がないこと、士業に依頼した場合でも、公正証書遺言よりも費用が半額以下に抑えられること、遺言者の死亡後に、家庭裁判所の検認手続が不要となるのは、とても大きいと思います。

 この自筆証書遺言の法務局への保管制度は、とても良い制度だと思いますし、もっと、もっと、利用されて良いように思います。