2025/1/2

司法書士試験の必要勉強時間3000時間という大罪

 よく、司法書士試験の合格必要な時間を3000時間と紹介するサイトがあります。資格に興味のある人で、この時間を妄信している人は多いです。でも、数年勉強しても受からない司法書士試験受験生が大半で、彼等はこう思うはずです。

 「一体、年に何人が3000時間で合格しているんですか(苦笑)」と。

 仕事を辞めて勉強に専念しても、365日勉強できるわけではありません。仮に週1日はオフや用事に使うとして、週6日、1日10時間勉強したとします。それで1年52週ですから、3120時間です。体調不良や家庭の事情等、諸々勉強できない時間もあるでしょうから、3000時間というのは、丁度無職で1年間勉強できる時間です。それで、無職で専念して、1年で受かるかというと、そんな人は年に数人、少なくとも、二桁を超える年は、まずないでしょう。

 では何故、司法書士試験の合格必要な時間を3000時間と紹介されることが多いかと言いますと、丁度予備校が一通り教える本科講座が、1年から1年数か月のものが多いからです。そのような講座でも、一つの予備校で毎年1人から、多い年では2人ほどは受かります(本当は一発合格者ではない場合もあります。)。そうすると、そのごくわずかな一発合格者を、予備校は広告塔として、ガンガン表に出すわけです。ある意味、司法書士試験の必要勉強時間3000時間というのは、予備校の本科講座を売り出すために便宜上造られた数字なのです。

 そもそも、仕事を辞めて2年間勉強に専念して合格しても、かなりの短期合格者です。つまり、6000時間で合格しても、かなりの短期合格者なのです。現実問題として、勉強時間の正確なカウントなどできません。あくまでも概算です。以前、匿名掲示板で、合格者が研修で周囲から聞いて、6000時間から7000時間で合格した人が多かった、という書き込みを見ましたが、本当かな、というのが私の印象です。新人研修や特別研修へ行って、私を含め、合格まで17年以上なんて、何人もいました。資格試験の世界へ入ってもうすぐ37年になりますが、あくまでも私見では、合格者の5割前後は、1万時間を超えていると思います。少なく見積もっても、1万時間超えの合格者は、4割は切っていないと思います。そもそも、1万時間以上勉強しても、合格できない人が大半なのです。旧司法試験、予備試験、司法書士試験は、そういう試験です。

 以前、行政書士試験の一発合格者が、司法書士を目指して4年勉強、択一の基準点は割と早く超えられたが、記述も含めた総合点は、合格点に届かなかった、仕事を辞めて最後の2年は勉強に専念したが駄目だったので断念する、こんな試験に手を出さなければ良かった、仕事を辞めなければ良かった、というネットの書き込みを見ました。でも、行政書士試験の一発合格者が司法書士試験の勉強を始めても、7割はこんなものだと思います。一昔前の、試験科目に憲法がなくて、試験時間が同じなのに記述のボリュームが現在の半分以下の古き良き時代でしたら、(期間は別にして)行政書士試験の一発合格者の半分は、司法書士試験に合格できたと思います。でも、今は試験の厳しさが桁違いです。現行の司法書士試験は、人間の事務処理能力の限界にチャレンジする試験です。現在は、行政書士試験の一発合格者でも3人に1人合格できるかどうか、まあ、3割程度しか合格できないのではないでしょうか。

 理論的には、司法書士試験に3000時間で合格できることは可能であるとは思います。どうせやるなら、まずはそこを目指すべきだとは思います。しかし、「司法書士試験の必要勉強時間3000時間」が独り歩きしてしまったために、人生を誤る人が出てきているように思います。それを試験科目に憲法がなくて、試験時間が同じなのに記述のボリュームが現在の半分以下の時代の合格者(講師を含む)が提唱しているとしたら、強烈な違和感を覚えます。貴方、本当に再受験して、現行試験に合格できるのですか、と問い詰めたくなります。この「司法書士試験の必要勉強時間3000時間」は、あまりにも罪作りだと思います。