2024/10/9

知らずに既婚者と関係を持ってしまうリスクの予防法

 独身だと思っていた交際相手が既婚者だった場合、二つの問題が生じます。一つは、貞操権の侵害として、こちらから相手方へ慰謝料請求できるかの問題、もう一つは、相手方配偶者からの慰謝料請求です。

 前者は、性的関係があり、なおかつ、結婚の話が出ている、若しくはそれに類する流れになっている場合に、慰謝料請求が可能です。

 問題なのは、後者です。後者の場合、既婚者であることが分かった時点で交際をやめれば問題ない、と思われがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。相手方が既婚者であることに、こちらに故意・過失があった場合、相手方配偶者からの慰謝料請求が認められる場合があります。慰謝料請求の裁判があった場合、故意・過失がなく、慰謝料請求が全く認められない場合の方が少ないともいわれています。「もう少し注意していれば、既婚者だと気付けたよね?」と、過失が認定され、少額でも相手方配偶者からの慰謝料請求が認められてしまうことが往々にしてある、ということです。

 この点、厄介なのが、判例が明確な基準を示していないことです。お見合いパーティーで知り合った既婚男性が独身と偽っていた事案で、相手方配偶者からの慰謝料請求が認められなかったという判例がありますが、ケースバイケースのようにも思います。特に近しい間柄で、独身だと確実にわかる相手以外と関係を持つのは、それなりにリスクを伴うともいえます。

 個人的に要注意だと思うのが、マッチングアプリです。独身証明書の提出を義務付ける本格的な婚活アプリや、任意だけれど独身証明書を提出している相手でない限り、マッチングアプリは、(特に女性にとって)相当程度の危険を伴うと思っています。

 そのリスクを避けるにはどうするか、ここでは特に女性視点に立って述べますが、私は、結婚を前提、若しくは結婚を意識した交際を始める前、あるいは性的関係を持つ前に、独身証明書の提示を求めるべきだと思います。公的機関の発行する独身証明書は、たとえば柏市ですと、たったの300円です。本籍地の役所の発行となり、コンビニでは取得できないため、本籍と居住地が離れていれば、取得が面倒ですが、それでも、郵送料も含めて、1000円もかかりません。

 確かに、独身証明書の提出を求められれば、相手は面食らうでしょう。でも、相手を真剣に考えた上での交際を希望しているのなら、応じてくれるはずです。たとえ本当に独身でも、証明書の取得が面倒なので渋るようであれば、そんな不誠実な相手では、遅かれ早かれ、上手くいかなくなる可能性が高いのでは、と思います。

 真剣な交際や、性的関係を持つ前に独身証明書の提示を求めるのは、マッチングアプリ以外での出会いでも有効ですし、特に有象無象の多いマッチングアプリでは有効だと思います。独身証明書は、相手方配偶者からの慰謝料請求で過失認定されることを予防するために、積極的に利用されても良いように思います。