2024/8/19

特別の寄与の容認の可否

 民法904条の2第1項は、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定(法定相続分、代襲相続人の相続分、遺言による相続分の指定)により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」と規定しています。いわゆる「寄与分」と呼ばれるもので、被相続人の財産の維持・増加の貢献度が高かった相続人が報われるよう、昭和55年に明文化された制度です。MUFG相続研究所首席件研究員の小谷亨一氏の執筆による、KINZAI Financial Planの2024年2月号における、特別の寄与について考えるという記事が、具体例も多く、参考になりました。

 結構一般にも知られつつありますが、療養看護について、面倒を見ていたという程度では寄与とはみなされず、扶養義務の範囲を超えた著しい程度の療養看護が必要であるとされています(個人的には、単に面倒を見ていた場合でも、多少は考慮して良いと思っています。)。療養看護で寄与分が認められた事例として、認知症だった被相続人につき、常時見守りが必要となった後の期間の親族による介護を、一日当たり8000円程度の寄与と評価しました(大阪家裁平19.2.8)。これは、TVの再現ドラマでも最近観た記憶があります。

 また、被相続人が経営する簡易郵便局の事業に貢献してきたが、相応の収入を得ており、食費や家賃は被相続人の負担であったことから、対価とのバランスを考慮され、特別の寄与とは判断されなかった事例もあります。

 反対給付や受益があった場合の寄与の考え方として、特別受益の持戻しを免除されていた相続人につき特別の寄与が肯定できるのは、特別受益の価値を超える寄与分が認められる場合であるとされたもの(東京高決平9.6.27)、貢献は大きかったが、既に生前贈与を受けており、持戻しをしないで相続分を計算している等の事情から、寄与分はないとされたもの(高松高決平11.1.8)などが挙げられます。

 特別の寄与は、ケースバイケースで判断しているため、その基準は難しいものがありますが、家裁の判例などで、勉強していこうと思っています。