2024/8/3
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特別寄与料が認められなかった具体例 |
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息子の妻は、自身から見て、相続人ではありません。したがって、身の回りの世話を親身にしてくれた場合、遺贈をしない限り、遺産を渡すことはできません。そのような遺言をせずに亡くなった場合に、全く努力が報われなくなるのを避けようということで法改正によって認められたのが、民法1050条の「特別の寄与」です。 その定義として、民法1050条1項は、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(…以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。」と規定しています。 この特別寄与料は、当事者の協議か、協議が整わなかった場合、家裁の調停・審判によることになりますが、制度が始まった翌年である令和2年から5年までの統計を見ると、調停・審判合わせて、約300数十件で推移しています。 特別寄与料を認めなかった審判例として、被相続人の弟が、被相続人の長男・次男に特別寄与料を請求したもので、当該弟の関与は、被相続人が亡くなる約5年前から、月に数回程度入院先を訪れて診察や入退院に立ち会ったり、手続きに必要な書類の作成、身元引受をした程度にとどまり、専従的な療養看護等を行ったものではなく、特別寄与料を認めるのが相当なほどに顕著な貢献をしたとまではいえないとし、特別寄与料を認めるのは困難であるとしました。 まあ、心情的に、多少の見返りを求めるのは、わからないでもないですが、この程度の貢献度では、この審判はやむを得なかったかな、という気がします。これも一つの基準例として、参考になるかと思います。これからも、特別寄与料の審判例に着目し、基準となるレベルを探っていきたいと思います。 |
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