2024/7/15
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難関資格受験のため新卒で就職しないのはお勧めしない |
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2023年3月にNHKの「ドキュメント72hours」で、LEC梅田本校を舞台に、様々な資格試験受験生を取材した模様が、放映されました。司法書士受験生も数名いましたが、その中で、今年受験7回目、今年ダメなら断念を示唆する内容の発言をしていた若い男性がいました。経歴は話していなかったとは思いますが、おそらく新卒で就職せずに定職には就いておらず、多少のバイトをしながらのフリーター状態での受験生でしょう。社会人経験のない多浪生特有の苦渋が、表情に滲み出ていました。もちろん、合格してほしいとは思いますが、勝負をかけた昨年の試験は明らかに記述がやり過ぎの年で、疲弊しきった多浪生には苦しかったかと思います。 新卒で就職せずに、専業、もしくは勉強と両立できる程度のバイトをしながらのフリーター状態で資格の勉強をしている人は、3パターンあると思います。①新卒で就職しなかったことに危機感を持っていて、少なくとも卒業2年目の試験を終えた後、正社員で就職する予定の人、②新卒で就職しなかったことに危機感がなく、合格するまで社会に出る必要がないという人、③は、①と②の中間で、26,27歳ぐらいには就職しないとまずいが、それまではフルタイムで働かないのはやむを得ないという人。①は少ないですが、こういう危機感のある人は合格率がかなり高い印象です。②は旧司法試験の受験生に多いですが、司法書士受験生では最も少ない印象です。②は司法書士受験生の場合、危機意識が低く、締め切りを作れない性格なのか、合格した人を私は知りません。③は、司法書士受験生では、最も多く、合格できるのも、ごく一部です。私もご多分に漏れずこのタイプで、一度受験を断念し、ブランクを作った後、25歳で司法書士事務所に正社員として勤務して、勉強を再開しました。これが私の社会人デビューですが、遅かったですし、新卒で就職しなかったことを今でも後悔しています。 あくまでもざっくりとした印象ですが、司法書士試験の場合、私は、社会人経験のない者より社会人経験者の方が、3倍ぐらい合格率が高いように思います。困難な状況への対応の仕方は社会人経験者の方が上ですし、試験の敵である、感情のブレを押さえるのも、社会人経験者に分があります。また、締め切りに対する意識も、社会人経験者の方が強いと思います。 大学在学中から難関資格の勉強をしている方にお勧めしたいのが、大学院への進学です。法律系ですと、法科大学院以外ということになります。そして、試験の合否にかかわらず、院の卒業で、新卒で就職するのです。仮に合格していて異業種で働くことになっても、その経験は、将来必ず役立つはずです。 私は、財団勤務時代、契約関係の仕事をしていましたが、仕事を発注する大手企業から、社内レートの提示を受けていました。そこで、人工費や、各種手当などを見て、大手企業がいかに恵まれているかを知り、私は、愕然としました。何で新卒での就職というカードを捨ててしまったのだろう、と激しく後悔しました。近年、日本特有の新卒一括採用は疑問視されていますが、現実には、未だにそれがスタンダードです。そうである以上、一生に一度しか使えないそのカードを、安易に手放すべきではないと思います。 大学院へ進学する費用がないというのであれば、宅建や行政書士を取り、合格証書を片手に自分はやればできる人間であるとアピールしながら、就職したら返す約束で、親戚中を回って援助を受けるというのも手です。本気であれば、やり方は色々あると思います。 フルタイムで働かずに難関資格の受験を続ける怖さは、試験でそれなりに健闘してしまうと、ここまで来たらあと1年、あと1年、と、ズルズルとフリーター状態での受験を続けてしまうことです。そうやって年数を重ねるほど、精神的に疲弊しますし、将来に対する不安から、集中力も低下します。試験にとってマイナスも多いのです。そうならないためにも、大学院という「執行猶予期間」を作り、結果の有無にかかわらず、新卒で就職する道を残すのは、大きな有効手段であると思います。 |
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