2024/5/4
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配偶者の不倫相手への行き過ぎた報復の危険性 |
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某サイトで、不倫をした女性が受けた報復の記事がありました。女性に人気のとある分野のフリーランスのインストラクターである独身女性が、個人レッスンの生徒である社長夫人によるマウントに対する仕返しとして、その夫人の夫を誘惑して不倫関係となり、貢がせました。しかし、不倫が夫人に知られることとなり、夫人はその女性の教室に押しかけ、生徒の前で不倫を暴露、女性は教室の閉鎖を余儀なくされました。また、女性のマンションの部屋の前で、大声で不倫について騒ぎ立て、マンションも退去せざるを得ませんでした。その上、不倫をした女性は慰謝料の請求も受けているとのことでした。 ここまでで読むと、自分から不倫に誘ったのだから自業自得、この報いは仕方ないよね、と思われるかもしれません。しかし、本当にそこまで許されるのでしょうか。この社長夫婦は離婚はしないそうですが、離婚しない場合の示談の相場は、100万円が上限です。不倫期間が短ければ、もっと少なくなる可能性もあります。夫が不倫相手に貢いだお金は、不倫関係維持のための贈与であるため、不法原因給付に該当し、返還請求をすることができません(民法708条、最大判昭45.10.21)。つまり、この社長夫人が不倫をした女性に請求できるのは、最大でも100万円です。 しかし、この社長夫人は、この女性の教室で生徒に不倫を暴露、オンラインで他の生徒にまで知られているので、刑法上の名誉棄損に該当する可能性が高いと思われます。また、威力業務妨害に該当する可能性もあります。これにより教室を閉鎖にまで追い込んでいますから、その損失は、本来夫人が請求できる100万円を超えている可能性は高いと思われます。マンションの部屋の前での騒ぎも、隣の住民に嫌味を言われたそうなので、こちらも名誉棄損に該当する可能性があります。つまり、この社長夫人は、明らかにやり過ぎたと思います。 この記事によると、この不倫をした女性は、夫人の報復に対し、されるがままになっているようですが、不倫が知られた時点で、専門家に相談するべきでした。現行の民法ですと、夫人から不倫をした女性への不貞行為に基づく慰謝料請求と、不倫をした女性から夫人に対する名誉棄損と威力業務妨害の慰謝料請求は、相殺可能です。むしろ、相殺の対当額を上回り、夫人へのある程度の金額の請求が認められるも可能性も十分あります。マンションの部屋の前で騒がれた時も、録音して警察に通報し、証拠に残すべきでした。あまりにもされるがままになり過ぎている印象です。 たまたまこの不倫をした女性が泣き寝入りしたから良かったものの、社長夫人は、名誉棄損や威力業務妨害で刑事告訴されても仕方ありませんでした。言い方は良くないかもしれませんが、不倫をした女性が情報弱者だったから助かっただけです。ここは怒りに任せず、事前に専門家に相談していただきたかったところです。配偶者の不倫相手への制裁は、読んでスカッとするため、ネットには多くの記事が散見されますが、このようにやり過ぎと思われる内容も多々あり、真に受けて同じようなことを実践すると、自身に不利になりかねないため、要注意です。 この不倫は、社長夫人によるマウントが切っ掛けでした。マウントを取ると、取られた側から、深い恨みを買います。私も司法書士が超長期受験の合格だったので、先に合格した人たちからマウントを取られたこともあり、やはり不快な思いをしました。また、セレブ自慢、セレブマウントの厄介なところは、やっている方に、その自覚がないことです。私も、社会人経験が短いまま若くして高給取りの男性と結婚し、数十年専業主婦をやっている女性からセレブ自慢を聞かされて、「それ、貴方の甲斐性ではなくて、旦那さんの甲斐性ですよね?」と、喉まで出かかったことがあります。単なる自慢ならまだしも、自分自身の実力ではないセレブマウントは、恨まれても仕方ないかと思います。 最後に、フリーランスの良い所は、意に沿わない仕事を断れることです。この不倫をした女性は、マウントに耐えられなければ、この社長夫人の個人レッスンを断っても良かったと思います。素直に言えば、反省して良い関係が築けた可能性もありましたし、終わるにしても、嫌がらせまでは受けなかったと思います。フリーランスで仕事が選べる人なんてごく一部で、普通は嫌な相手とも我慢して仕事をしなければならない、という人もいますが、自業自得とはいえ、結果的にこの女性は全てを失ってしまったわけで、夫人一人を切った方が、遥かに小さな損失で済みました。また、フリーランスは信用が命で、自分の評価がマイナスになることはするべきではなかったと思います。この点、この不倫をした女性は、思慮が浅かったと思います。 色々と考えさせられることの多い記事でした。 |
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