2024/4/6

不倫の代償としての経済負担は慰謝料だけではない

 不貞行為をした側の夫婦の一方から離婚を請求できるのか、いわゆる有責配偶者からの離婚請求が認められるのかについては、著名な判例があります(最大判昭62.9.2)。

 判例は、別居が相当の長期間に及び未成熟子が存在しない場合を主な要件にして、有責配偶者からの離婚請求を認めました。その後も有責配偶者からの離婚請求につき、判例はいくつも出ていますが、この「相当な長期」は、10年程度が目安のようです(8年で認められた例もあります。)。

 これは、離婚請求が有責配偶者からか、された側からかのいずれかにかかわらず、離婚を前提として別居する場合に共通することになると思いますが、KINZAI Financial Planの2023年7月号における、鶴岡大輔弁護士による離婚Q&Aによると、別居期間中の婚姻費用の負担が、慰謝料よりもずっと多いとのことでした(冷静に考えると、そうですね。)。実際、私も身近な例で、よく知っています。たとえば、子供が二人いて月15万円の婚姻費用を負担すると、10年で1800万円となります。また、夫が家を出て賃貸アパートを借り、妻子が住む自宅のローンの支払いもあると、経済的負担は更に過酷なものとなります。

 不貞行為というと、慰謝料ばかりに目が行きますが、別居期間の婚姻費用や住宅関係の費用負担まで考えなくてはなりません。既婚者で不貞行為をされている方は、そこまで考えるべきでしょう。

 KINZAI Financial Planは、正直、司法書士にはそれほど参考にならない月もありますが、この2023年7月号の離婚の特集は、なかなか読み応えがありました。折に触れ、紹介していきたいと思います。