2024/2/20
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司法書士の遺産分割協議における役割 |
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「市民と法」という雑誌の142号の「司法書士による遺産承継業務の実務の課題と展望」という、早稲田大学教授の山野目章夫先生と、一般社団法人日本財産管理協会(以下、「日財協」といいます)の司法書士の方々との対談が掲載されていました。遺産分割協議について興味深い記事がありましたので、感想と共に書いてみたいと思います。 まず、遺産分割協議への司法書士の支援業務について、遺産分割は紛争事件だから、司法書士は携われないのではないか、というところからスタートします。この記事では、遺産分割のスタートの段階では、まだ紛争性はない、としており、私も同感です。そして、その紛争性について、山野目先生は、「意見・利害に齟齬・対立があって、裁判所における解決を待たなければならないことになるおそれがある事態が紛争なのだということを基準に、それぞれの局面で考えていることになる」と述べられています。つまり、そのレベルに至らなければ、特別受益や寄与分、指定相続分がある場合であっても、司法書士が関与しても構わないことになります。 そして、司法書士の遺産分割協議における関与の方法ですが、日財協副理事長の佃一男先生の提唱する、特定の相続人に肩入れする支援は、代理行為とみなされた懲戒事例があるため、相続人全員の利益のために業務を行う、中立型の調整役が望ましいというような、議論の流れに落ち着いていました。私も、それが妥当だと思います。 上記紛争になった場合は、弁護士にバトンタッチすることになりますが、親族間の話し合いに弁護士を立てると、以降は絶縁覚悟の宣戦布告となります。また、親族それぞれが弁護士を立てた場合、弁護士は依頼人の利益を最優先するため、話がなかなかまとまらず、結局、弁護士抜きで親族間のみで話し合って決着した、という話も聞いたことがあります。私は、遺産分割協議について、そのような事態にはならないように、可能な限り、相続人全員の利益のために、中立的な立場で調整する、それが司法書士の役割だと思います。 |
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