2024/2/16

「カバチタレ!」の功罪

 題名は何度か変わりましたが、行政書士を題材にした、「カバチタレ!」という漫画がありました。2度もドラマにもなった、長期連載の人気作でした。

 私も好きでしたが、途中から登場した住吉という行政書士が苦手だったことと、非弁護士行為(以下、非弁行為といいます。)といわれても不思議ではない、黒に近いグレーな行為が多いことに疑問を感じ、第1部の終わりを区切りに読まなくなり、単行本の収集も辞めました。

 この漫画は、行政書士でもここまでできるんだ、という、非弁行為を度外視してエンターテイメントとして楽しめるのか、あるいは、やり過ぎだ、と楽しめなくなるのかで、評価が分かれるかと思います。私は、途中から後者でした。

 ただ、原作者の田島隆行政書士は、グレーではあっても、非弁であるとの意識までは強くなかったのではないか、と推察します。といいますのも、田島氏が合格したのは平成7年度試験で、行政書士としての活動は、翌年からのはずです。当時は法科大学院もなく、弁護士がゼロか一人しかいない、「ゼロワン地域」もあった時代で、また、司法書士の簡裁代理権もありませんでした。したがって、非弁の色合いのあるかなりグレーな案件でも、やり過ぎなければ、黙認されていた部分はあったかと思います。少なくとも、連載の開始した平成11年当時は、そのような意識があったかと思います。

 「市民と法」という雑誌の142号において、行政書士の村尾和俊先生も触れていましたが、結果的に、カバチタレ!の影響を受けて、非弁チックな行政書士も増えてしまいました。カバチタレ!は、行政書士に光を当て、多少なりともメジャーにした功績はありますが、よからぬ行政書士を増やしてしまったのも事実です。実際、平成20年前後までは、非弁を匂わせる怪しいHPや、他士業の領域をやらせるよう要求するHPなど、眉をひそめたくなるような行政書士もいました。

 それでも、法科大学院により弁護士が増え、認定司法書士制度も定着すると、徐々にそのような人たちは減りました。

 しかし、私も争いが140万を超えると、認定司法書士の範囲ではなくなるので、行政書士としてどう対応するか、ネットで調べていると、争いの相手方と何度も書面でやり取りをして示談を進める、実質、代理人であり、非弁行為ではないか、という業務をやられている行政書士の方がいました。当人は「代理人」ではなく「使者」だからOKという理論でしょう。

 「使者」は、依頼人の意見をただ伝えるだけで、代理人ではありません。しかし、それを繰り返せば、行政書士としての意思も入りますから、実質的には代理人であり、非弁行為と言われても、仕方ないと思います。実際、私も行政書士登録をしたばかりの大昔の頃の研修で、同様の行為をやっていた方が、実質非弁だからやめるようにと、講師役のベテラン行政書士から釘を刺されていました。

 まだカバチタレ!の影響が残っている方がいたんですね…

 改めて、襟を正そうと思いました。