2024/2/6

素人判断によるW不倫の大きな代償

 元々は数年前の記事ですが、W不倫について、インパクトのあるネット記事を見かけました。

 とあるW不倫が発覚し、当事者4人で話し合い、慰謝料は相殺し(正確には、個人間に相殺は成立しません。実質、夫婦間では成立するとも言えますが、法的には、お互い債権を放棄することになりますので、以降、債権の放棄という言葉を用います。)、支払わないことにしましたが(この時点では、いずれの夫婦も離婚はしません。)、3年の消滅時効前に、一組の夫婦が離婚することになり、慰謝料を請求してきました。請求された側の配偶者は、では自分も慰謝料を請求しようとしたところ、相手方が行方不明となってしまったため、請求できず、請求された側のみが支払ったとのことでした。

 理不尽だけれど、仕方ないよね、と思われるかもしれません。しかし、債権の放棄は、書面による必要はありません。お互いに債権の放棄について合意すれば、その時点でお互いの債権債務は消滅します。その後、たとえ離婚しようと、慰謝料請求はできません。この件の場合、最初に慰謝料請求を受けた側が、「あの時、お互い債権を放棄するということで、合意しましたよね?」と主張することは可能でした。それに対して、「債権の放棄の合意などしていない。」という反論があるかもしれません。しかし、W不倫が両夫婦に発覚して4人で話し合い、慰謝料の取り決めをしないわけがありません。単純に「債権の放棄の合意などしていない。」は苦しいでしょう。もし請求するのであれば、「慰謝料については留保し、3年の消滅時効成立前までは請求可能である。」旨の取り決めが必要になると思われます。

 債権の放棄に合意した時点で慰謝料の請求権は消滅しているのですから、請求された夫婦は、安易に支払いに応じず、専門家に相談していただきたかったところです。この件は、相場よりも低い金額で決着したようです。債権の放棄の合意を書面化していなかったという不備はありますが、裁判になれば、更に低い金額での和解だった可能性もありますので、やりようはあったと思います。

 4者で債権の放棄の合意をした後、男女間トラブルに精通した司法書士か行政書士に、合意書の作成を依頼するべきでした。「慰謝料については留保し、3年の消滅時効成立前までは請求可能である。」旨を書面化する方法もありますが、不安定な合意ですから、債権の放棄について合意し、これで債権債務は存在しない旨を書面化した方が、無難でしょう。

 W不倫で離婚せずに再構築する場合、正直、された側は、やられ損の側面もあることは否めません。だからこそ、当事者間の合意は口約束にせず、専門家に書面化してもらうべきだと思います。専門家に依頼すれば、ほんの数万円程度で済んだところを、素人の口約束で済ませたため、その数十倍の金額を支払うことになったという事例でした。