2024/2/2
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令和5年度行政書士試験の合格率約14%は適正か? |
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私は予備校の仕事をしていますが、今回は予備校とは関係なく、私個人の意見として書きます。 1月31日に、令和5年度の行政書士試験の合格発表がありました。 合格率は約14%(13.98%)という、非常に高い合格率でした。 行政書士試験は、6割取れば合格できるという絶対評価で、当然、問題の難易度によって、合格率は変わります。平成以降で最高の合格率は、平成14年で19.23%、最低は、平成17年の2.62%で、年度によって、当たり、外れのある、非常に不平等な試験です。 私は、LECに勤務していた頃、某役員から、「資格試験は、合格率10%ほどが、最も良い人材が集まる。」と言われたことがあります。個人的には、ほぼ同意見です。私が行政書士試験に合格した平成4年は、初めて合格率が一桁となった年で、9.4%でした。これ以上難しくする必要もないし、簡単にする必要もない、丁度よい合格率だと思っていました。 当時は旧試験で、現在とは出題形式が異なります。択一式2時間の後、30分の休憩を挟んで、1時間、論述の試験がありました。論述は、字数は覚えていませんが、1時間かけるので、そこそこ、ボリュームがありました。この論述が曲者で、現在社会の事象に、当時新たに施行された法律や、改正された法律を当てはめて問題解決を考察するという、時事的な要素が強く、かなりの準備が必要な出題でした。また、現在の一般知識に相当する一般常識は、旧試験の方が用意周到な準備が必要でした。現行試験と比べると、法令の択一式は、現在の方が、ずっと難易度は高いと思います。ただし、現行試験の記述は問わずか40字(計3問)で、内容も択一式の延長なので、論述の負担の重さや一般知識(常識)の負荷を考えると、一概に、どちらが厳しいとは言い難いものがあります。まあ、法令の択一式の難化を考慮して、現行試験の方が少し厳しいというところが、妥当でしょうか(かけ離れた差はないと思います。)。その難化分を修正すると、合格率を9.4%からやや緩和して、上から数えて11.0%を基準にして、受験生の人数や出来を考慮の上、前後0.3%位のところで調整するのが妥当では、と個人的に思います。結論を言いますと、絶対評価を廃止し、合格率11.0%を基準に、10.7~11.3%の相対評価にするべきである、というのが、私の意見です。 そうすると、令和2年の10.7%、令和3年の11.18%は適正な範囲で、令和4年の12.13%、令和5年の13.98%は、適正よりも高いことになります。令和5年、平成29年(15.72%)、平成27(13.1%)は、適正よりも、かなり高い合格率だといえます。私は、予備校で記述式民法の添削を5年間やっていた経験上、受験生のレベルを知っていることからも、これは好ましくない数値だと思います。令和4年、平成30年(12.7%)も、やや問題だと思います。 ただ、行政書士は、公務員OBによる特認が大量に存在しています。中には、法律の知識がゼロに等しいような方もいます。その方々とのバランスを考慮して、総務省は緩和の方向にあるのかな、という気もしないではありません。予備試験、司法試験、司法書士試験という法務省管轄の試験と違い、行政書士試験は総務省管轄の試験ですから、系統が違い、どのような方向性か、読めないところがあります。 繰り返しになりますが、行政書士試験は、上位10.7~11.3%の相対評価が適正であり、現状の不平等な絶対評価から移行すべきである、と私は思います。 |
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